米国、ヘンプ由来のTHC製品を規制対象へ

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米下院農業委員会が2024年5月17日に発表した農業法改正案が議論を呼んでいます。この改正案には、ヘンプ由来のTHC製品を禁止する条項が含まれており、多くの関係者がその影響について意見を述べています。

本記事では、この改正案の背景や内容、賛成および反対意見、さらにその影響について詳しく解説します。

Contents

改正案の背景

2018年農業法とヘンプの合法化

2018年に制定された農業法は、ヘンプを連邦レベルで合法化し、THC含有量が0.3%未満のヘンプ製品の生産と販売を認めました。

しかし、この法律にはいくつかの抜け穴があり、特にデルタ-8-THCのような合成カンナビノイド製品が市場に流通することを許しています。これらの製品は、陶酔性があるため一部の州では問題視されてきました。

2024年農業法の草案

2024年5月17日、米国下院農業委員会は、2024年農業法(正式名称:農業、食品および国家安全保障法)の942ページに及ぶ草案を公開しました。この法案は、10年間で1.5兆ドルの予算が見込まれています。

修正案の内容

この修正案はイリノイ州のメアリー・ミラー議員によって提案されました。ミラー議員は、「私の修正案は、デルタ-8のような陶酔性ヘンプ製品の販売を可能にする2018年農業法で作られた抜け穴を塞ぐものです。これらの製品は子供たちにマーケティングされており、何百人もの子供たちが病院に送られています。私たちはティーンエイジャーや若い子供たちが中毒性のある有害な薬物に晒されるのを防がなければなりません」と述べています。

修正案の具体的な内容

修正案は以下のような内容を含んでいます。

  1. すべての食用ヘンプ製品に含まれるTHCの禁止:いかなるレベルのTHCを含むすべての食用ヘンプ製品を禁止する。
  2. ヘンプの定義の再定義:ヘンプを「自然に存在する、自然に由来する、非陶酔性のカンナビノイドのみに限定」し、「植物外で合成または製造されたカンナビノイド」を合法的なヘンプの定義から除外する。

賛成意見について

子供たちの保護

ミラー議員の修正案に賛成する代表者たちは、特に子供たちの保護を強調しています。デルタ-8-THCを含む製品が子供たちにマーケティングされ、健康被害を引き起こしているとの指摘があります。

このため、陶酔性のあるヘンプ製品の販売を規制することが必要だと考えています。

明確な規制の必要性

一部の代表者は、現在のヘンプの定義が曖昧であり、意図的および非意図的な製品を区別するためにもっと明確化が必要であると述べています。

バージニア州のアビゲイル・スパンバーガー議員は、「繊維ヘンプ生産者にとって、この修正案は彼らの価値ある仕事を明確にし、製品の有用性を示すものです」と述べています。

反対意見について

農家への影響

インディアナ州のジム・ベアード議員をはじめ、多くの議員が修正案に反対しています。ベアード議員は、「アメリカの農家は現在のヘンプの定義によって与えられる確実性を享受するに値します。提案された修正案は、現在議会によって書かれたヘンプの定義を恣意的に変更するものです」と述べました。

多くの農家が2018年の農業法に基づいてヘンプ栽培に多額の投資をしてきたため、この変更は農業ビジネスに大きな打撃を与えると懸念されています。

産業への広範な影響

先住民カンナビス産業協会の創設者であるロブ・ペロ氏は、修正案がCBD製品にも影響を与えることを懸念しています。「これはデルタ-8のような潜在的に有害な製品に影響を与えるだけでなく、THCを定量的に含む非陶酔性のCBD製品にも及びます」とペロ氏は述べました。

このような広範な禁止は、ヘンプ製品市場の90-95%を実質的に排除し、数多くの農家や起業家の生活を脅かすとされています。

業界団体の反応

米国ヘンプラウンドテーブルの声明

米国ヘンプラウンドテーブルは、修正案のニュースに対して即座に声明を発表しました。「委員会のスタッフや議長個人から、ヘンプ産業を殺すような努力を支持しないという確約を何度も受けていましたが、残念ながら、議長が手続きを回避して別個の投票を避けるための戦術を使う決定を下したため、非常に欠陥があり、強く反対する政策が通過しました」と述べています。

全国カンナビス産業協会(NCIA)の推奨事項

全国カンナビス産業協会(NCIA)は、「カンナビノイド規制の未来をナビゲートする」という論文に基づき、陶酔性ヘンプ製品をどのように最適に規制するかについての推奨事項を発表しました。

これには、陶酔性THCヘンプ製品をカンナビスやアルコールと同様に規制すること、ヘンプ製品のTHC許容率を0.3%から1%に引き上げること、そして「合理的な」THC含有量の制限を設けることが含まれます。

「議会は、カンナビノイド製品に対する合理的な規制を制定することで、公衆衛生を保護し、小規模事業を支援する機会を持っています」とNCIAのCEOであるアーロン・スミス氏は述べました。

まとめ

2024年の農業法改正案は、ヘンプ由来のTHC製品に対する規制を強化することを目指しています。この修正案は、特に子供たちの保護を目的として提案されていますが、その影響は広範に及ぶ可能性があります。

多くの農家や起業家が影響を受けると懸念されており、業界団体からも強い反対の声が上がっています。

農業法とその修正案は下院に送られ、さらに討議が続けられる予定ですが、最終的な結論はまだ見えていません。議会が合理的な規制を制定し、公衆衛生を守りつつ、小規模事業者の支援を行うためのバランスを見つけることが求められています。

今後の動向に注目し、適切な情報を収集していくことが重要です。

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著者

2019年〜CBD系のカンナビノイド製品制作を開始。オレゴン州で製品の販売や原材料の輸入・輸出事業を経て、カンナビノイド業界に携わる企業の経営サポート・コンサルティングに携わる。